>>長夜之宴
唐突に思い浮かぶのは青空の下、独りで空を見上げる幸村だ。 その下にはおびただしい数の屍。その中でたった独りで佇み、 血に塗れた赤さえ飲み込む真紅の甲冑を纏い、槍を持ったまま、 ただ空を見上げる――そんな姿だ。 「蒼穹の下、真紅を纏いて」より |
○収録作品(3の話はありません。2までとオロチ再臨までです)
・宴の始まり
・遠く、彼方
・君が夢見た夢の正体(※サイトではbe in a dream)
・合縁奇縁
・悲劇未満
・贖罪の月光
・散り逝く花弁
・あの紅き葉
・赦しのしらべ
・一瞬の恋
・不明瞭な仮定論
・蒼穹の下、真紅を纏いて(書き下ろし)
・宴も闌(書き下ろし/ドラマCD月光の誓いベース)
※サイト再録作品はあまり加筆していませんが、「宴の始まり」のみ加筆をかなり加えているので、
バサラ佐助×幸村、というよりはただの主従に近い話に変わっています。
佐助もバサラ佐助と似て非なる人と思って頂ければ幸いです(笑)
書き下ろしは2作品。「宴も闌」は三幸前提ですが、何故か三成出てません(笑)
ドラマCD月光の誓いがベースですが、ご存知でなくてもさして問題ありません。
>> preview
○蒼穹の下、真紅を纏いて ―――六文銭。 三成の脳内に幸村の掲げる家紋が唐突に思い出された。 いつでも死ねる覚悟、三途の川の渡し賃。だからこそ命を削るかのように美しく輝きながら幸村は戦っているのではないかと、三成は思う。死ねる覚悟はもちろん三成にもある。戦いの中で命を落とすことになろうとも、後悔は決してしない。そんな覚悟を胸に、何時だって三成は戦場に立っている。 だが三成にはその先に見たい景色――義の世――がある。その世で三成は真の泰平を作っていきたいのだと、誓える。それこそがあの小田原での、友人に誓った義の中の一つ。 今はまだ過程なのだ。戦に勝つ事も、采配を振るうことも、戦に勝つだけでは義の世は作る事ができない。 だが幸村は。その礎になれるのならば消える覚悟があるのだと、二人さえ守れればその先に義の世が出来ると頑なに信じている節がある。それはまるで、その先は託してもいいと言わんばかりにも三成には思えて恐ろしかった。 ***中間部分より抜粋*** ○宴も闌 しかし。そんな佐助の危惧と同じ匂いを敏感に嗅ぎとったもう一人の男がいた。 ――その人物こそ、小田原で得た友人の一人である石田三成。 小田原から帰ってきた主からその二人の名前を聞いた時、佐助は真っ先に二人の素性を調べ尽くした。もちろん主には伏せたまま、佐助の独断だった。真田の血には昔から敵が多い。そして真田を利用するものも多い。主が得た友人は豊臣と上杉の腹心――そんな彼らに下心が無いかと佐助はまず疑ったのだ。結局それは杞憂に終わったのだが。 石田三成と直江兼続は主にとって良い友人だった。それは佐助が思う以上に。 直江兼続は清廉な人物で義に厚く、信用に足る人物で、主の僅かな感情の起伏にも気がつける懐の深い男。そして。 そして、石田三成。 初めて会った時、――とは言っても遠目で見ただけなのだが、その時の佐和山の主が浮かべていた瞳の奥に潜む熱。それを佐助はすぐに気がついた。そしてそれは月日を重ねるごとに確かなものになり、あの不器用な男が主だけに見せている姿に、その想いが本物だと知った。 そしてあの男は主の胸の奥にひっそりと寄り添う喪失に、気がついた。 己の感情を殺す事の上手い真田幸村を見抜ける人物、だった。 ***中間部分より抜粋*** |