▲拍手お礼文・ログ▲






○想定外○(三幸)



結局それは三成の想定の範囲外だったのだ。



彼には敵が少ないとは言えなかった。
それは真っ直ぐで己の信念を突き通す、という彼の意志の固さに起因するものであったのだが、如何せん彼は言葉を選ぶと言う事を余りしなかった。
そして彼の信念を真っ直ぐ見通す、優れた部下には恵まれたが、友人には恵まれなかった。
恵まれなかったと言うより彼が必要としていなかった。彼は秀吉配下の武将の中でも圧倒的に知略に優れていた。それが内部で嫉妬を呼び、敵を作ると言う要因の一部にもなったのだが。

だが、彼に友人と呼べる存在が出来た。
それはとても心強く、多くの不必要な言葉を使わずとも信念を共有できる事は心地よかった。

それはまるで奇跡のようなものだ、と彼の部下はからかい混じりに笑った。
しかし時程なくして、彼に奇妙な感情が生まれる。

赤にまみれる戦場で赤を纏い、まるで彼の足元に及ぶ者などこの世には存在しないのではないかと思わせるほどの猛将だった。
しかし戦場以外では驚くほど穏やかに笑う、存在。
そして時折、彼が今まで誰にも見たことのようなほろ暗い瞳で、遠くを見つめる、存在。
戦場での存在感と威圧感は圧倒的とも言えるほどであるのに、存在があまりに儚い。


彼はそんな存在から瞳を逸らせなかった。
「何なんだ、これは」
答えはまだ出ない。
何処かで気付き始めている癖に、友情と言う言葉にすりかえる。



『言葉に出さないと、不安か?』


想定外の出来事に対する結論は、まだ未定。




END