▲拍手お礼文・ログ▲
○問われる笑顔○(三成×幸村) ※「罪業の果て」設定 いつも笑っているのは何故? そう聞かれた事が、ある。 どうして笑顔なのか、それを幸村は知らない。その理由を考えたこともなかったし、笑顔を浮かべ続けている自覚も無かったという所が本当の所だった。 その科白を誰に言われたのか明確には思い出せない。ただ最近の事ではない。あれは海外の文明が津波のように押し寄せて来た頃だっただろうか。何を糧に暮らしていたのだろうか。まだ槍を持つことで日々の暮らしをたてていたのか、捨てていたのか、思い出せない。否、敢えて思い出す作業を意図的に避けているのかもしれない。が、その言葉だけは鮮明に覚えている。 ―――笑顔。 そうだったのだろうか、幸村という名を捨て、新しい名を持ったままで考えてみる。聞く相手は居ない。時間のあるべき流れの中で皆、彼岸に行ってしまったのだから。 笑みを浮かべる理由。 それを幸村は知らない。ただ笑顔は自然に浮かぶ。浮かぶよりは貼り付く。それが取れない。 笑わずにいる理由を幸村は知らない。 怒りの表情を浮かべているよりも笑顔の方がメリットが多いはずだった。相手の警戒心を解き、世を渡りやすくする。そういう生き方を選んだのは、選ぶしかなかったのは、誰でもない幸村だ。 幸村が笑わなくても良いとき。それが本当に心を許し、ただの幸村になる瞬間であるという事を、信繁はまだ知らない。 そしてその人物と再び巡り会えるときが迫っていることを彼はまだ、知らない。 END |