嘗て理想を掲げ、時代の本流に身を捧げた3人の男が居た。
名を石田三成、直江兼続、真田幸村と云う。

だが、時代は彼らの理想を実現させる事は終ぞ無かった。


―――石田三成
時は慶長5年。天下を二分する合戦―後に関ヶ原の戦いと呼ばれる激戦―に於いて西軍総大将を務めながらも、計略、裏切りにより敗走。
同年10月、六条河原にて理想の世の実現が叶わぬまま斬首。

―――直江兼続
石田三成と同じく西軍として東北にて挙兵。しかし関ヶ原本線に於ける西軍の敗北により撤退。
戦いの後に主君・上杉、そしてその民のため、理想を捨て家康に下る。
元和5年12月、捨てた理想を胸に刻みながら病死。

―――真田幸村
関ヶ原の戦いに於いて居城に篭城。家康が子、秀忠軍を迎え撃つ事に成功したが、本戦の敗北により配流。
慶長19年、豊臣家最期の戦いとなった大坂夏の陣に於いて後世に語り継がれるほどの戦果をあげるも、後一歩のところで家康の首を逃す。
同戦いに於いて、時代の猛将は歴史から姿を消す。最期まで理想を掲げるも、時代は彼に味方をしなかった。



そうして若き3人が掲げた理想はその命と共に歴史の闇に沈む。



記録される歴史が史実を創るのか。
史実が記録される歴史を造るのか。
歴史は改ざんされ、歪曲を経た後、時が経てば人の思いも歴史の大海に漂流するのみ。
死して時代を経れば、真実は残らない。それは真理、そして必定、世の理。


―――しかし『世の理』が覆されたとすれば?


歴史に沈んだ紅き猛将。
彼には影武者が多く存在したと云う。生き延びた逸話は新しき泰平の世でも消える事は無かった。
しかしそれも史実。時が経てば虚構か真実か史実なのかも分からない。




そして時は400年もの月日を刻む。


――其れは理想の世の実現が叶わぬ無念に因るものだったのか。
――其れは捨てた理想に後悔を刻んだ懺悔の念に因るものだったのか。
――其れは、
理想を望み続け、帰らぬ日々に焦がれた想いに因るものだったのか?


時代は忘却を望む。当事者が消える時を狙って。
記録された歴史は脚色を望む。史実という武器を盾にして。
しかし時代は忘却されなかった。歴史は脚色をされなかった。

当事者の生存。
そう。それは、在り得ぬ摂理の歪曲によって。



『負け大将と同じ名だ』
『私は大河ドラマの主人公と同じ名だ!』

『幸せ者なのです、私は』

『それはとても誇り高き名。自信を持ってください』

『まるで見てきたかのようだな。流石史学部だ!』

『私はとても欲深いのです』

『待て、何処かで聞いたことのある――、』

『嗚呼、やっと終わりが、来る』


『私の名は、』



――上田信繁、と申します。



そうして、彼の終焉無き世界に始まりと時同じくして、終わり、がやってくる。


罪業の果て