▲拍手お礼文・ログ▲







○遠くて遠い距離○



戦場でも遠い、なんて。

戦場の本陣というものは案外静かなものである。
理由は簡単だ。
「伝令からです。真田隊、相手方本陣前まで攻め行った、とのことです」
手短な左近の言葉に目線だけで承諾の意を伝える。

理由は簡単だ。
ーー幸村がいるから、だ。

自然と出陣前の会話が思い出された。幸村はいつもと同じように笑っていた。ただ穏やかに大丈夫です、と。
三成殿もお気をつけて、と。

同じ言葉を返すしかなかった。本当はもっと違う言葉があったはずなのに。いつか後悔するのではないか、と思う自分にぞっとした。そしてそんな自分に嫌悪する。
何処にこんな哂える人間が大将を務めている?
けれど自分の脳は冷静に戦況を分析して、指示を出す。思考も想いも外に追いやって。
「真田隊に全て任せる」
今日も勝つだろう。間違いなく。
それは軍略を立てる大将としての意見。
そうして一番危険な場所に追いやっていくのだ、ともう一人の自分が自分を嘲笑う。

ーー言われなくても知っている。そんな事。

そして遠くに六文銭の御旗が見えた。
安堵する事もきっとおこがましいのだ。きっと。


(そして今日も言いたい言葉は、いえないまま)




END