▲拍手お礼文・ログ▲






○unconsciously○


その風に揺れる髪があんまりふわふわ揺れるもんだから。
ついでに太陽の光を受けて酷く輝くもんだから。



「…何やってるんだよ」
響いてくるのは聞きなれすぎた声。しかも不機嫌ときた。
ディーンは弟の発した言葉の意味が分からず、ぼんやりと視線を向ける。
「何が」
とディーンが問えば、サムは盛大に顔をしかめる。
「…兄貴、大丈夫?」
大丈夫に決まってんだろ。そんな意味を込めて弟を見つめると、サムは目線だけ自分の頭に向けた。

「手。」

そこでやっとディーンも気がついた。
――自分の手がサムの頭を撫でるように置かれている。

「…何やってんだ、俺」
「こっちが聞きたい」


静かな町のカフェテラス。サムはPCで調べ物、ディーンはコーヒーのおかわりを店内に取りに行って、戻ってきて、ふと弟を見たら。
風に揺れる髪があんまりふわふわ揺れるもんだから。
ついでに太陽の光を受けて酷く輝くもんだから。
…だから。
……だから?


「…う、げっ!!」
そこまで思い至って、ディーンは正気を取り戻したかのように慌てて手を離した。反対側の手に収まっているコーヒーカップがディーンの手のひらをじりじり焼いているが、それどころではない。全く持ってそれどころではない。
そんな兄の様子にサムは少し眉根を寄せる。
「何だよ。人の頭触ったかと思ったら、急に“うげっ”て」
「いや、あー…気にするな」
「はぁ?」
益々不審そうな顔をしているサムの視線には気がつかない振りをして、ディーンは慌ててコーヒーカップを机の上に置いた。
――とうとう…やってしまった。
「兄貴、大丈夫?」
「大丈夫に決まってんだろ」

たぶん。
と内心で呟きながらディーンは自分の席に腰を下ろした。
サムは暫くディーンの方を見たが、ディーンが何も言う気が無いと悟ったのか、自分の作業に戻る。次の狩りの下調べだ。
ディーンも過去の被害者を調べる為に新聞を開く。
しかし内容は全く頭に入らず、己の先の行動ばかりが思い出される。

触りたかった。

…なんて言ったら確実に病院に連れて行かれる。もしくは、悪魔にでも憑かれてるんじゃないかと聖水をかけられる。悲しいかな小憎いかな、優秀すぎるのだ、弟は。
バサリ、と読んでもない新聞をめくりながらディーンはちらりと弟をこっそり見る。
サムはすでにパソコンのキーボードを軽快に慣らしてこちらには目もくれない。

無意識とは恐ろしい。
しかも。
自覚しつつ、その想いを封じ込めなくなってきている方がもっと恐ろしい。
「…サム」
「何?」
パソコンの画面から視線を逸らさずに返事をする弟にディーンも新聞の方を見つめたままで呟いた。
「何か俺がおかしい、と思ったら思いっきり殴っていいぞ」
「はぁ?」


果たしてディーンが何発殴られる事になるのかは別の話。



END